医者のキャリア

フリーランス医師 メリット・デメリット

最近、フリーランス医師という

新しい働き方が注目を集めています。

明確な定義はありませんが、

医局に所属せずに、

自分の裁量で複数の医療機関で

非常勤やバイトとして働くスタイルです。

特に初期研修を終えた

若手医師の中には、

従来の医局制度に縛られず、

すぐにフリーランスとして

働き始める方も増えています。

広い意味では、

基礎研究を日中している

大学院生の先生も

フリーランス医師的な

働き方をしますよね。

わたしも大学院生の頃、

基礎研究の傍ら

医師バイトをしていましたので、

フリーランス医師の働き方が

多少は実感があります。

その経験から感じた

フリーランス医師として生きる

メリットとデメリットについて、

具体的にお話ししていきたいと思います。

◯フリーランス医師 メリット・デメリット

①メリット

1. 時間の自由度が高い

2. 人間関係の煩わしさが少ない

3. 収入を伸ばしやすい

4. 多様な経験を積める

②デメリット 

1. 医師としてのスキルが上がりにくい

2. 収入が不安定

3. 長期的には収入が伸び悩む

4. 所属がないことの不安

①メリット

1. 時間の自由度が高い

外来バイトは午前のみや午後のみなどを選べ、

自分の生活リズムに合わせた働き方が可能です。

わたしは大学院生のときは、

午前中は研究をしてから、

午後から近くのクリニックで

外来といった組み合わせができました。

当直も、救急対応の少ない

療養型病院や老人保健施設を

選んで働くことができます。

週3-4日の外来と

月数回の当直を組み合わせれば、

十分な収入を確保しながら、

自由な時間も持てます。

子育て中の医師は、

保育園の送り迎えや学校行事に

合わせて仕事を調整できます。

体調や家庭の事情に応じて、

勤務日数を増減することも可能です。

また、

趣味や自己学習の時間も確保しやすく、

ワークライフバランスを

重視した働き方ができます。

2. 人間関係の煩わしさが少ない

医師の仕事は

患者さん、看護師さん、

他科の医師など、

様々な人との関わりが求められます。

特に常勤では、

医局内の上下関係や

病院組織内の人間関係に

気を遣うことも多いです。

例えば、

医局に所属すると

医局会への出席、

若手の指導など、

様々な役割が求められます。

また、診療以外の

委員会活動や病院行事への

参加なども必要になってきます。

一方、

フリーランスの場合は、

外来の看護師さんや

受付スタッフとの関わりが

中心となります。

当直も、その日限りの

関係なので気楽に働けます。

長期的な人間関係を築く必要がないため、

純粋に診療に集中できる環境があります。

組織の軋轢に巻き込まれることも少なく、

ストレスの少ない働き方が可能です。

3. 収入を伸ばしやすい

外来診療では短時間で

多くの患者さんを診察するため、

収益性が高くなります。

常勤より高い時給で働けることが多く、

わたしの経験でも1.5倍〜2倍の差がありました。

例えば、一般外来だけではなく、

ワクチン接種や健診など、

決まった業務を効率よくこなすことで、

安定した収入を得られます。

土日の当直は、

平日よりも割増の報酬が

期待できる場合もあります。

救急外来の経験を活かして、

救急病院の当直をすることで、

高額な報酬を得ることも可能です。

また、

複数の医療機関を

掛け持ちすることで、

収入を増やすこともできます。

自分の働き方次第で

収入をコントロールしやすく、

繁忙期に集中して働いて、

その後はゆっくり休むといった

調整も可能です。

地域によって報酬に差があるため、

より条件の良い地域で働くことも選択できます。

4. 多様な経験を積める

複数の病院で働くことで、

様々な医療現場を経験できます。

市中病院でも色々なレベルがあり、

クリニックなど、

れぞれの医療機関の

特色や違いを学べます。

また、

都市部と地方では求められる医療が異なり、

地域による医療の特色も知ることができます。

それぞれの病院の診療スタイルを

見ることで、自分の診療の幅を

広げることができます。

さらには意外と

異なる電子カルテシステムや

医療機器に触れることで、

適応力も身につきます。

救急外来、一般外来、健診など、

多様な診療形態を経験することで、

総合的な診療能力を養えます。

医療機関ごとの患者層の違いを知ることで、

より柔軟な診療対応ができるようになります。

②デメリット 

1. 医師としてのスキルが上がりにくい

外来や当直といった

限られた業務になるため、

専門性を高めることが難しいです。

入院診療や手術など、

医師として重要な経験を

積む機会が極めて限られます。

例えば、

手術手技を習得したい場合、

定期的に手術に入る機会がないと

上達は望めません。

若手の時期に重要な

指導医からの直接指導も受けにくく、

系統的な医師教育を

受ける機会を逃してしまいます。

新しい治療法や診断機器の使用方法など、

最新の医療技術を学ぶ機会も限定的です。

また、

珍しい症例や難しい症例を

経験する機会も少なく、

診療の幅が広がりにくいです。

学会発表や論文作成といった

学術活動にも参加しづらく、

アカデミックな面での成長が遅くなりがちです。

さらに、

専門医取得に必要な症例数を

集めることも困難になる

可能性があります。

2. 収入が不安定

コロナ禍では、

真っ先に非常勤の仕事が減らされ、

収入が激減した医師も多くいました。

景気や病院の経営状況によって、

突然の契約解除や勤務日数の

削減が起こりえます。

病気や怪我で働けなくなった時の保障もなく、

収入が完全にストップしてしまう可能性があります。

ボーナスや退職金といった

安定収入も期待できず、

将来設計が立てにくいです。

健康保険や年金などの

社会保障もすべて自己負担となり、

意外と経済的な負担が増えます。

また、住宅ローンを組む際も、

フリーランスという働き方が

不利に働くことがあります。

繁忙期と閑散期で収入の波が大きく、

安定した生活設計が難しい面もあるでしょう。

3. 長期的には収入が伸び悩む

外来診療のスピードや

患者さんとの関係構築など、

特定のスキルが重要になります。

常勤医のように

幅広い経験を積むことが難しく、

キャリアアップの機会も限られます。

年齢とともに体力も落ちてくると、

たくさんの患者さんを診ることも

難しくなります。

専門医資格の取得が困難なため、

将来的な収入アップにつながる

要素が少なくなります。

管理職としてのキャリアも望めず、

経験年数に応じた待遇改善も期待できません。

また、

新規の非常勤募集は

若手医師が優先されることも多く、

年齢とともに仕事を確保することが

難しくなります。

さらには将来的に開業する際も、

常勤医としての実績や経験が少ないため、

なかなか開業には踏み切るのが難しいでしょう。

継続的な技術向上の機会が少ないため、

長期的には診療能力の向上が頭打ちになりやすいです。

4. 所属がないことの不安

困ったときに相談できる

同僚や先輩が近くにいないため、

診療上の判断に不安を感じることがあります。

とくに若手の経験が少ないうちは、

自分の診療に自身が持てないでしょう。

学会参加や論文発表なども、

個人で手続きや費用を負担する

必要があります。

医局の人脈を活かした

転職やキャリアアップの機会も

失われがちです。

緊急時のバックアップ体制がないため、

重症例の対応に不安を感じることもあります。

さらには、

やりがいを感じにくい面もあります。

特に自分に特別なスキルがないと、

医者のしごとの中でも

単調な仕事ばかりになってしまいます。

さらには、

医療訴訟などのトラブルが

起きた際のサポート体制も弱く、

個人で対応しなければなりません。

長期的なキャリアプランを立てにくく、

将来への不安を感じやすい働き方といえます。

【まとめ】

◯フリーランス医師 メリット・デメリット

①メリット

1. 時間の自由度が高い

2. 人間関係の煩わしさが少ない

3. 収入を伸ばしやすい

4. 多様な経験を積める

②デメリット 

1. 医師としてのスキルが上がりにくい

2. 収入が不安定

3. 長期的には収入が伸び悩む

4. 所属がないことの不安

フリーランス医師という選択は、

自由な働き方ができる反面、

医師としての成長や長期的な

キャリア形成には多くの課題があります。

特に若手医師は、

まずは常勤医として十分な経験を積んでから、

ライフステージに合わせてフリーランスへの

移行を検討するのが望ましいかもしれません。

ただし、

これらのメリット・デメリットを十分に

理解した上で選択すれば、

充実した医師人生を送ることは

十分に可能です。

その時々の生活スタイルや価値観に合わせて、

柔軟に働き方を選べることは、

現代の医療界における大きな選択肢の

一つといえるでしょう。​​​​​​​​​​​​​​​​

ABOUT ME
医師YouTuberいっさ
地方国立大学医学部卒、医師。 整形外科専門医、医学博士。 You Tubeでは、医者のかたわら、 動画配信3,000本以上を達成。 既に5,000人以上の登録者がある。 "医者の進路のお悩み"を中心に、 医療にまつわる話を配信している。