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腓骨神経麻痺-整形外科医専門医が解説する意外と身近な神経麻痺

今回は腓骨神経麻痺についてお話しします。

実は、この症状は意外と身近なものです。

まず、今回この話題を取り上げるきっかけについてお話しします。

つい先日、研修医の子に腓骨神経麻痺の症例をみせる機会がありました。

その瞬間、わたしは

「そうか、意外と腓骨神経麻痺を見たことがない若い先生が多いのかもしれない」と気づきました。

さらに、救急科の先生とお話しする機会があり、その先生も

「実は腓骨神経麻痺を見たことがないんです」

とおっしゃっていました。

これらの経験から、腓骨神経麻痺について詳しく解説することが、多くの方々にとって役立つのではないかと思い、今回のテーマに選びました。

整形外科医にとっては日常的に遭遇する症例でも、他の診療科の先生方や一般の方々にとっては、あまり馴染みがないかもしれません。

しかし、この症状は日常生活でも起こりうるものです。

例えば、長時間正座をしていた後に足が上がりにくくなったという経験がある方もいるかもしれません。

そこで今回は、腓骨神経麻痺について、その仕組みから症状、予防法まで詳しく解説していきたいと思います。

それでは、具体的な内容に入っていきましょう!

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◯腓骨神経麻痺-整形外科医専門医が解説する意外と身近な神経麻痺

①腓骨神経麻痺とは?

腓骨神経麻痺は、足の動きや感覚に関わる重要な神経である腓骨神経が、何らかの理由で圧迫されたり損傷を受けたりすることで起こる症状です。

具体的には、足首を上に曲げる動作(背屈)が困難になったり、足の甲や指先の感覚が鈍くなったりします。

例えば、長時間足を組んで座っていたり、ギプスで足を固定していたりした後に、突然足首が上がらなくなる症状が、腓骨神経麻痺の典型的な症状です。

②腓骨神経の圧迫されやすい部位

腓骨神経は、膝の外側から足首にかけて走っている神経です。

特に圧迫されやすい部位は、膝の外側にある腓骨頭という突起の周辺です。

具体的には、

腓骨頭の頂点から約2〜5cm下の位置です。

ここは骨と皮膚の間に脂肪が少なく、神経が表面近くを通っているため、外からの圧迫を受けやすい場所です。

自分自身でも腓骨神経を触れることができます。

例えば、

ベッドで横向きに寝ている時に、この部分が下敷きになってしまうと、腓骨神経が圧迫されやすくなります。

また、手術中に足を固定する際にも、この部位に注意を払う必要があります。

③腓骨神経麻痺の症状

腓骨神経麻痺の主な症状は以下の3点です。

1. 足関節の背屈障害
2. 母趾の背屈障害
3.足背の知覚神経障害

1. 足関節の背屈障害

足首を上に曲げる動作

(背屈)が困難になります。

具体的には前脛骨筋(TA)の機能障害による足関節背屈(伸展)障害がおこります。

この状態を

尖足(せんそく)といいます。

歩く際に、つま先が引っかかりやすくなったり、足を引きずるような歩き方になったりします。

2. 母趾の背屈障害

見落とされがちなのが、足の親指を上に曲げる動作が難しくなります。

足関節の背屈はもともと足関節のかたい人や拘縮がある方もおおくわかりずらい。

このときに母趾の伸展を評価することでより腓骨神経麻痺を同定することがしやすくなります。

具体的には長母趾伸筋腱(EHL)の運動障害でおこります。

ポイントは、これらの症状は健側(症状のない側)と比較するとよくわかります。

ただし、もともと関節が硬い方や、怪我などで動きが制限されている場合は、判断が難しいこともあります。

また骨折後の患者さんは患肢が腫れていてよくわからなかったりします。運動指示もうまく入らないことも多い。

そのため、何度も何度も動かしてもらって健側と比較することをする必要があることを知っておきましょう!

3.足背の知覚神経障害

腓骨神経は

浅腓骨神経と深腓骨神経

分岐をします。

(Netterより)

それぞれに知覚神経領域がことなります。

とくに、第1,2足趾間や深腓骨神経の固有知覚領域なのでここの知覚は別途確認しましょう。

④腓骨神経麻痺が起こりやすい状況

腓骨神経麻痺は、以下のような状況で起こりやすいです。

1. 長時間の同じ姿勢

2. 手術中や入院中の体位

3. ギプス固定

1. 長時間の同じ姿勢

例えば、足を組んで座る姿勢を長時間続けると、腓骨神経が圧迫されやすくなります。

(腓骨頭部が圧迫されています)

元気な人が

日常生活で圧迫して腓骨神経麻痺を起こすのはまれです。

しかし、最近の震災のように避難所や車内で長時間過ごしていると健常者でも起こすことがありえます。災害のときは下肢血栓と同様に腓骨神経麻痺も注意が必要な病態です。

2. 手術中や入院中の体位

特に下肢の手術や、長期臥床が必要な場合に注意が必要です。

例えば、大腿骨転子部骨折の患者さんでは、足が外旋(外側に回転)しやすく、腓骨神経が圧迫されるリスクが高まります。

3. ギプス固定

骨折などでギプス固定をする際、腓骨神経の走行に注意を払わないいけません。

なぜならば、ギプスによる圧迫で腓骨神経麻痺を起こす可能性があるから。

足首の捻挫でシーネを当てるときも注意!

とくにU字にシーネを当てるときは腓骨頭レベルまでいかないように注意をしましょう。

整形外科医でなければ、L字シーネ固定で翌日整形外科再診を指示するほうが無難です。

⑤腓骨神経麻痺の予防と対処法

予防法としては、以下のようなことが挙げられます。

1. 長時間の同じ姿勢を避ける

2. 適切な体位の管理

3. ギプス固定時の注意

1. 長時間の同じ姿勢を避ける

定期的に姿勢を変えたり、軽い運動をしたりすることが大切です。

震災時は、ずっと同じ姿勢で座っていることも注意。

災害時であっても適度な歩行やストレッチはむしろ積極的に行ったほうがよいでしょう。

2. 適切な体位の管理

入院中や手術中は、医療スタッフが適切な体位管理を行います。

例えば、クッションを使って圧迫を避けたり、定期的に体位を変えたりします。

このときに腓骨頭周囲の除圧だけではなく、下腿外側に圧迫がかからないように臀部や背部のクッションをいれるのも大切です。

3. ギプス固定時の注意

ギプスを巻く際は、腓骨神経の走行に注意を払い、過度な圧迫を避けます。

もし症状が現れた場合は、早めに整形外科を受診することが大切!

軽度の場合は、圧迫を解除するだけで改善することもありますが、重度の場合は専門的な治療が必要になることがあります。

前述のとおり、とくにU字にシーネを当てるときは腓骨頭レベルまでいかないように注意をしましょう。

整形外科医でなければ、L字シーネ固定で翌日整形外科再診を指示するほうが無難です。

また、わたしが先日診察した患者さんは、ソフト牽引をかけることで外旋位になるのを防ぎ症状の改善が見られました。

【まとめ】

◯腓骨神経麻痺- 整形外科専門医が解説する意外と身近な神経麻痺

①腓骨神経麻痺とは?

②腓骨神経の圧迫されやすい部位

③腓骨神経麻痺の症状

④腓骨神経麻痺が起こりやすい状況

⑤腓骨神経麻痺の予防と対処法

腓骨神経麻痺は見過ごすと後ほど回復しない意外と怖い病態です。

今回の話を参考に、明日からの診療にぜひ活かしてください!

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ABOUT ME
医師YouTuberいっさ
地方国立大学医学部卒、医師。 整形外科専門医、医学博士。 You Tubeでは、医者のかたわら、 動画配信700本以上を達成。 既に2,000人以上の登録者がある。 "医者のキャリア形成"を中心に、 医療にまつわる話を配信している。